恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「花澄…………っ」
環は花澄の肩口に顔を伏せ、彼女の頭をかき抱いた。
熱く切ない想いが、胸に広がっていく。
そもそも最初から、復讐など不可能だったのかもしれない。
……あのクリスマスの夜。
彼女に再会した瞬間、自分は彼女に復讐することではなく、彼女にもう一度会うことだけを願っていたのだと心の奥底で気が付いた。
そして再会してから数か月間、自分は復讐を名目に彼女に会っていた。
そしていつのまにか、目的は復讐ではなく、彼女に会うことにすり替わっていた。
そう、自分は……
────ただ、彼女に会いたかったのだ。
環としての自分が無理なら、暁生としての自分でもいいから好きになってほしいと、無意識のうちに願っていた。
愛を信じられないのに、愛を求めていた。
たとえ裏切られたのだとしても、また裏切られるのかもしれなくても、それでもいい。
だからどうかもう一度だけ、自分を好きになってくれと……。
それだけを、心の底から願っていた。