恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



────翌朝。


ベッドから身を起こした花澄は、いつもと違う朝食がサイドテーブルに置いてあることに気が付いた。

いつもはパンや卵料理、果物などが殆どなのだが、今日の朝食は……。


「……っ」


椀の中で雑炊がほかほかと湯気を立てている。

花澄はそれを見、息を飲んだ。


これは……。


震える手で匙を取り、雑炊をすくい、口元へと運ぶ。

……その瞬間。


「────っ!!」


口の中に広がる懐かしい味に、花澄は思わず匙を取り落した。

……忘れるはずがない。



────これは、環が作った雑炊だ。


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