恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



素材の味を生かした、滋味に溢れる深い味わい。

舌に馴染んだ懐かしい味に、体の細胞がざわっと沸き立つ。


もう、食べることは一生ないと思っていたのに……。


視界が滲み、目尻から熱い涙が溢れだす。

涙は頬を伝い、ぽたぽたと盆に落ちていく。


「……美味しい……」


まるで体が求めているかのように、匙が止まらない。

食欲がなかったのが嘘のようだ。

花澄は泣きながら、ひと匙、またひと匙と雑炊を口元に運んだ……。



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