恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



このマンションは環の他に、もう一人女性が住んでいるらしい。

どうやら出張中らしく、花澄はまだ直接会ってはいないが、黒服たちの話を聞くに、恐らく展示会場で会ったあの女性だろう。

考えてみれば、環ほどの人がこの7年間、彼女がいなかったなどということは考えられない。

環があの人に口づけ、抱き寄せる姿を想像すると、胸が張り裂けそうに痛む。


……そう……。


自分はやはり、まだ環が好きなのだ。

環は自分の心に思いきり爪を立てたまま、あの人の方を向いている……。

……失ってしまった、自分の半身。

環はもう昔とは変わってしまったのに、自分だけが、まだ彼への恋情を捨てられないでいる。



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