恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



雪也の言葉に、環は息を飲んだ。

────あの日の、真実……。

雪也は足を組み、前髪をかき上げて環を見る。


「あの日。……君は空港で律子さんから、破れた航空券を渡されたと思う。律子さんが何と君に言ったのかはわからない。だが……」

「……?」

「あれを破ったのは、花澄じゃない。────俺だ」


雪也の言葉に、環は凍りついた。

衝撃が環の心を襲う。

そしてさらに続いた言葉に、環は目を見開いた。


「花澄はあの日、君を追って空港に行こうとした。けれど俺がそれを止めた。そして花澄は祖母の清美様に説得され、君に付いていくのを断念した」

「…………っ」

「花澄が空港に行かなかったのは事実だ。だが一度は、彼女は君を追おうとした。……彼女のその気持ちを、君には分かっていてほしい」


雪也の言葉はかつてない衝撃となって環の心に広がっていく。

環は震える手をぐっと握りしめた。


……航空券を破ったのは、花澄ではなかった……

……花澄は、自分を追って空港に来ようとしていた……

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