恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



あの日、彼女が空港に来なかったのは事実だ。

しかし自分が知っていた事実は一面だけに過ぎなかった。

そしてその事実だけで、自分は彼女に恨みを募らせていた。


熱い何かが心の底から突き上がる。

────ずっと求めていた、真実。

思わず口元を押さえた環に、雪也は少し笑って言う。


「だから、そこまで思われていた君が彼女を不幸にするというなら、俺は君を許さない。俺のプライドにかけて、君と彼女の仲を裂いてみせるよ?」

「……月杜さん……」

「それが嫌ならちゃんと彼女に向き合うことだね。……俺達ももう大人だ。大人なりの、けじめのつけ方をしなければね……」


雪也は言い、少し切なそうに瞳を歪めた。

……何かを諦めるような、苦しげな瞳。

環はその瞳に雪也の決意を感じ、そっと目を伏せた。


自らの汚点を明かしてでも真実を告げた雪也。

花澄を幸せにしたいという、その翳りのない想い。

雪也の愛し方は清冽な月のように一直線で、翳りがない。


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