恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



花澄がなぜ、この男を好きになったのか。

今ならばその理由がわかるような気がする。

……この男は、真っ直ぐに人を愛せる男だ。

そして大人になった今は、『大人の愛し方』で彼女を愛そうとしている。

それに比べて自分はまだ、未熟な愛し方しかできない。


どうすれば、この男に負けないような大人の愛し方ができるのか……。


復讐という安易な道に逃げ、花澄に非道いことをしてしまった自分。

……今からでもまだ、遅くはないだろうか。

花澄の心を、取り戻せるだろうか……。


焼けるような焦燥感が胸にこみ上げる。

環は宙を見つめ、心を落ち着かせるようにゆっくりと息をついた……。



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