恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



その日の夕刻。

花澄は綿の薄ピンクのワンピースという部屋着姿で、辺りを見回しながら廊下を歩いていた。

辺りに人影がないことを確認し、キッチンの扉をキィと開ける。

花澄はキッチンの中を見回した後、するっと中に入った。


────あれから。

寝室のクローゼットにはしだいに服が増えていき、部屋には観葉植物や加湿器、ぬいぐるみ、パソコンなど、日増しにいろいろなものが置かれるようになった。

そのどれもが、花澄が昔気に入っていたものや、『欲しいな』と言っていたものばかりだ。

最初の頃はネックレスや指輪などの装飾品も置かれていたが、ここ数日はその代わりに可愛いスイーツのセットや、チョコの詰め合わせなどが置いてある。

『花より団子』という花澄の性格を知っている環だからこそ、ここまで気の利いたものを用意できるのだろう。


しかし。

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