恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
<side.環>
18:00。
会社を出た環は、急ぎ足で花澄が待つマンションへと向かった。
花澄が自分のマンションに来てから約2週間弱。
環はこの一週間ほど、花澄の食事を作っていた。
朝に昼の分まで作っておき、夜には再びキッチンに立ち、食事を作る。
ここに来たときには食が細かった花澄が、環が作り始めてからは出されたものを完食するようになった。
……それだけで、心が温かくなる。
自分の心は、思っていたより単純なのかもしれない。
やはり自分は、彼女を傷つけるより彼女に尽くす方が向いているのだろうと、今更ながらにそう思う。
多分あの事実を知らず、彼女への復讐心を持ち続けたとしても……きっと自分は彼女を破滅させるのではなく、彼女に尽くすことで復讐することを選ぶだろう。
彼女を豪華な部屋に閉じ込め、彼女が欲しがるものを全て与えて、彼女の身の世話は全て自分がし、夜には身悶えるほどの歓びを彼女に与えて……。
────それは7年前、環が望んでいたこととほぼ同じだ。
彼女にひたすら尽くすことが自分の愛だと、あの頃の環は思っていた。
しかしそれは自己満足にしかならない、幼稚な愛し方だったと今となっては思う。