恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
今は盲目的に彼女を愛するのではなく、彼女の強さも弱さもきちんと見つめて、彼女の将来を支えていける人間になりたいと思う。
自分がこれまでに努力して得てきたものを、そのために生かしていきたい。
彼女自身をちゃんと見つめて、彼女と新しい関係を築いていきたい。
『……なんか雰囲気変わったわね、暁生?』
『春燕……』
『『真実』はどうやら、あんたの心を闇から引き揚げてくれたみたいね。あとはちゃんと彼女に伝えなさい? 今のあんたの、正直な気持ちを』
帰り際、そう言って嫣然と微笑んだ春燕。
春燕は香港に渡った後、初めて会った、環の実の姉だ。
本妻である彼女の母は環のことをあまりよく思っていないが、春燕は日本から来た寂しげな目をした弟を優しい微笑みと共に受け入れてくれた。
最初は正直疎ましく思った時もあったが、今は彼女に感謝している。
彼女も雪也と同じく人の心を察することに長けており、人付き合いが苦手な自分を優しい目で見守ってくれた。
庶子に過ぎない自分がこの年で董事という役職に就けたのも、彼女の協力によるところが大きい。
いつか、花澄にちゃんと紹介したいと思ってはいるのだが……。