恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



環はマンションの玄関をくぐり、エレベーターホールへと向かった。

ちょうど降りてきたエレベーターに乗り込み、35階のボタンを押す。

このマンションは日本滞在用に、半年ほど前に環が購入したものだ。

春燕も日本滞在中はこのマンションを使っているが、今は大阪に出張中のため、マンションには花澄と環しかいない。


「……花澄……」


花澄にはあれから、ちゃんとした形で会ってはいない。

花澄がここに来た当初は、復讐する気持ちが鈍るからと会わないようにしていたのだが、今は……。

こんなことをした自分を花澄がどう思っているのか、それを知るのが怖い。

けれどもう、逃げ続けるわけにはいかない。

自分の気持ちを、もう一度やり直したいということを、しっかりと伝えたい。


環は玄関の鍵を開け中へと入った。

靴を脱ぎ、廊下の灯りをつけてキッチンの方へと向かう。

食材は全て黒服に頼んであるため、すぐに調理に取り掛かれるはずだ。

と思いながらキッチンに入ろうとした環だったが。


「────っっ!」

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