恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~

4.大人の選択




その週の土曜。

新宿駅にほど近い喫茶店の一角で。

花澄はテーブルを挟み、雪也に向かい合っていた。


「……そう、なるほどね……」


花澄の話を一通り聞き終わった後。

雪也は昔と変わらない、穏やかな表情で花澄を見た。

────昔から花澄の心を支えてくれた、初恋の人。

雪也がずっと自分に向けてくれていた想いを、その深い気持ちを考えると心が痛む。

でも、だからこそ……自分の口で、はっきりと言わなければいけない。


花澄はひとつ息をつき、……意を決し、言った。



「だから……ごめんね、雪くん。私は、環を選びます」



────例え雪也を傷つけても。

それでも自分は、環とともにこの先の未来を歩いていきたい。

その覚悟を瞳に込め、花澄は真っ直ぐに雪也を見つめた。

< 301 / 389 >

この作品をシェア

pagetop