恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
雪也は一瞬驚いたように目を見開いた後、その澄んだ双眸をすっと細めた。
瞳に広がる、切ない痛みと……哀しみ。
その瞳に、花澄の心も締め付けられるように痛む。
けれどこの痛みは、自分が受けとめなければいけないものだ。
じっと見つめる花澄に、雪也は目を伏せ、少し笑った。
「……予想してはいたけど。実際に言われると、堪えるものだね」
「……雪くん……」
「やはり君の心にはずっと、彼がいたんだね?」
雪也は優しく微笑み、花澄を見る。
……その瞳に漂う、哀しい諦めの色。
花澄がこくりと頷くと、雪也は長く細いため息をつきテーブルの上で指を組んだ。
「俺より彼の方が、君を強く愛したのかもしれない。……けれど俺は、誰よりも君を理解し、深く愛していた自信がある」
「雪くん……」
「ずっと昔から、俺は君の強さも弱さも知っていた。そして君も俺の性格を誰よりも知っていた。……それでも君は俺を選ばなかった。それが答えだ」