恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
雪也は自嘲するように少し笑い、花澄を見た。
ずっと昔から花澄の心を包んでくれた、月の光を溶かしたかのような透明感のある瞳。
雪也の真っ直ぐな心を映した、その瞳……。
花澄は何も言えず、じっと雪也を見つめていた。
「これ以上ないほど君から信用されていながら、それでも男として君の心を捉えることはできなかった。……我ながら、情けないな」
「……っ、雪くん……」
「でも君は俺に、ひとつ大事なものをくれた。……こんな俺でも、心から誰かを愛せるんだっていう自信だ」
雪也は目を細め、眩しげに花澄を見る。
感謝と、少しの切なさが混ざったその眼差し。
「長い春もこれで終わりか。……でも俺は後悔はしていない。それに君たちとの関係を、ここで終わらせるつもりもない」
「……?」
「幼馴染に戻るよ。君たちの結婚式にはぜひ呼んでほしい。来賓スピーチでも何でもしてあげるからさ?」