恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
花澄は工房の戸口から人影が出てくるのを見、目を丸くした。
あれは……。
人影は花澄と環の姿を見ると、驚いたように足を止めた。
しかしすぐにその長い黒髪を揺らし、二人の方へと歩み寄ってくる。
上品な薄紫のスーツを身に着け、毅然とした足取りで向かってくる、その女性は……。
「……美鈴?」
驚く花澄の前で、美鈴は足を止めた。
美鈴も驚いたように花澄と環の顔を見比べ、その紅い唇にゆっくりと笑みを刷く。
……藤堂美鈴。25歳。
花澄の従姉にして本家のお嬢様だが、7年前の諍いで花澄の家とは縁を切っていた。
その美貌も勝気な瞳も相変わらずだが、二人を見つめる瞳には大人の女性の落ち着きのようなものも感じられる。
「……久しぶりね。花澄、環」
「うん、久しぶり……」
「さっき、繁次おじさんに挨拶してきたの。……私ね、今度、結婚することになったの」