恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
少し強引なその口調に、なぜか胸がドキッとする。
花澄はまじまじと暁生の顔を見つめた。
暁生も眼鏡の奥の瞳を細め、じっと花澄を見つめている。
……強い光を帯びた、刺すような視線。
瞳越しに伝わる、得体のしれない、何か……。
それは、言うなれば……
────破滅の予感。
この男は危険だ、と全身が警鐘を鳴らす。
それは7年前、あの夜に感じた危機感と同じだ。
……情熱に流され、溺れるように環にしがみついた、あの初めての夜。
男の体から香る甘くスパイシーな香りに、じわりと心を絡め取られていく……。
「さて、それでは戻りましょうか」
暁生は花澄と知奈の顔を見、にこやかに言う。
花澄は頷き、歩き出そうとした。
そのとき、先ほど一礼した時に中で引っかかったのか、スーツのポケットから街頭で貰ったキャバクラの名刺がはらりと落ちた。
「……っ!」