恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



環は俯き、神妙な顔で言う。

繁次は困ったようにうーんと首を捻っていたが、やがて妙案を思いついたとばかりにぽんと手を叩いた。


「そうだ。ではこれで、あの鎌倉の屋敷を買い戻すことにしよう」

「……え?」

「で、お前達が将来、日本に滞在するときはそこに住むようにすればいい。どうだ? 名案だろう?」


父は目を輝かせて言う。

花澄と環は驚き、思わず目を見開いた。

……が。


────確かに名案かもしれない。


二人が育った、北鎌倉の屋敷。

様々な想い出が詰まった、あの懐かしい場所。


そこにまた、二人で戻れるというのなら……

こんなに嬉しいことはない。


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