恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



────そう。


たとえ離れても、今の二人の間には『約束』がある。

約束があれば、別離も怖くはない。

寂しさはあっても、哀しくはない。


……未来への、約束。

7年前とは違い、この別離は希望に満ちた別離だ。


「……環、お酒飲みすぎちゃダメだよ? 仕事が忙しくても、食事はちゃんと摂ってよ?」


と、花澄が言うと。

環はくしゃっと花澄の頭を撫で、微笑った。


「酒はもう飲まない。飲む理由がなくなったからな?」

「環……」

「酒を飲む時間があるなら、お前と電話で話している方がよほどいい。……というわけで、おれからの電話には絶対出てくれ。でないと心配で酒に手を出すかもしれない」

「もう、何言ってんの、環!?」

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