恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
環は言いながら、再び電卓を叩きはじめる。
花澄は知らなかったのだが、環は香港大学の経済学部に在籍していたらしい。
考えてみれば、環は屋敷にいた時も家計管理や工房の資金管理に携わっていた。
「そういえば環って、会社ではどんな仕事してるの? 前に水事業がどうのって言ってたけど、それも関係あるの?」
と、花澄が聞くと。
環は再び手を止め、少し考えた後、話しはじめた。
「今やってるのは日本法人の事業策定だ。日本法人は少し前に立ち上げたばかりで、まだ細かい業務内容が確定していない」
「……?」
「やることは決まってるんだけどな。これから港南機業はアラブ向けの淡水プラント事業に本格的に乗り出す。日本法人はそのための機器の買い付けや調整を専門に行う会社だ」
「……なるほど」
「淡水浄化の機器は日本が技術的にはトップレベルだ。自社開発が可能ならそれがベストだが、あいにくそこまでの時間的余裕がない。だから日本法人を作った」