恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~




と、花澄が口をとがらせて言うと。

環はおやといったように榛色の目を細め、クスクスと楽しげに笑った。

テーブルには焦茶色のクロスと白のテーブルセンターが掛けられ、真中には赤い薔薇や橙色の百合など、鮮やかな花が上品にあしらわれている。

環は元の口調に戻し、その長い睫毛を少し伏せて言った。


「別に馬鹿にしてるわけじゃない。おれの見立てに間違いはなかったと確信しただけだ」

「……なんか、そうは聞こえなかったけど」


と、花澄がムクれると。

環はすっと真顔になり、背を正した。

花澄をじっと見つめ、その綺麗な形の唇を開く。


「────綺麗だ」

「っ!」


花澄は思わずカッと頬を染めた。

突然の直球な言葉に、なすすべもなく硬直してしまう。

狼狽える花澄を、環の色を帯びた榛色の瞳がじっと見つめる。


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