恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「……どうした?」
「あ……ううん。迷っちゃって……」
「何でも好きな物を頼めばいい。遠慮するな」
どこか大人の貫録のようなものすら感じる、その瞳。
……やはり、昔とは違う。
その大人びた眼差しに、花澄の心臓が物凄い勢いでバクバクと動き出す。
花澄は慌ててメニューに視線を戻した。
「ま、まずはお酒だよね。……あ、でも、強いお酒はマズイかな?」
ここから汐留のマンションまではそれなりに距離がある。
あまり飲んでしまうと帰るのが大変になってしまうだろう。
と花澄は内心で思いつつ、お酒のリストを見た。
それにしても……。
昔はデートと言っても、学校帰りにスーパーで買ったアイスを二人で公園で食べたり、学校の柱の陰でこっそりキスをしたり……
それだけで、十分ドキドキしていた。
けれど今、アイスは優雅なフランス料理に代わり、そして、キスは……
「────上の部屋を取ってあるから」