恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



背後でカタンと音がする。

衣擦れの音と、かすかな足音。

夜風に乱れた髪を手櫛で整え、振り返ろうとした花澄の首に……。

シャラッという音と共に、何かが後ろから回される。


「……っ?」


首筋にひやりとした金属の感触。

見ると。

胸元で、小さなダイヤのネックレスが揺れている。

星形の銀の土台の上にダイヤが埋め込まれたそれは、上品だがとても可愛らしく、花澄は思わず見惚れてしまった。


「……やはりお前の肌には、シルバーがよく似合う」


耳元に触れる、甘い吐息。

掠れたハスキーな声に、体の芯がぞくっと震える。


「環、これ……っ」

「あのネックレスの代わりだ。お前にやる」


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