恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



環はパチリと花澄の首の後ろでネックレスの留め具を留めた。

背後からふわりと香る、環の甘く濃密な花の香り。

花澄は環の体の香りをとてもいい香りだと思っているのだが、環本人は甘すぎると思っているらしく、それでわざとスパイシーな香水をつけているらしい。

花澄は慌てて環を振り返った。


「環、そんな……、悪いよ」

「悪い? ……言っとくが、これはお前が思ってるようなものじゃない」

「……え?」


と、思わずぽかんとした花澄に。

環は唇の端で笑い、囁いた。


「これは、お前の位置を特定するための発信機だ。お前が家と職場以外のところに行ったら、黒服がすかさずお前を捕獲しに行く」

「…………え?」

「冗談だ」



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