恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~




心地よい疲れが全身にさざ波のように広がる。

甘く湿った夜気に、互いの汗の香りと情交の香りが混ざっている。

────心地よい、香り…………

花澄はすり寄るように環の胸に頬を寄せた。

環は愛おしげに何度も花澄の髪を梳き、その先端に口づける。


「……花澄」

「……なぁに?」

「覚えてるか? ……おれがお前を初めて抱いた夜……」


環の言葉に、花澄は目を見開いた。

思わずポッと頬を染める。


「……忘れるわけないでしょ」


と、花澄が上目づかいで環を見ながら言うと。

環は少し笑い、花澄の背を抱き寄せた。

しばらく何かを考えるように花澄の髪を弄んだあと、そっと花澄の頬を撫でる。


< 348 / 389 >

この作品をシェア

pagetop