恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
心地よい疲れが全身にさざ波のように広がる。
甘く湿った夜気に、互いの汗の香りと情交の香りが混ざっている。
────心地よい、香り…………
花澄はすり寄るように環の胸に頬を寄せた。
環は愛おしげに何度も花澄の髪を梳き、その先端に口づける。
「……花澄」
「……なぁに?」
「覚えてるか? ……おれがお前を初めて抱いた夜……」
環の言葉に、花澄は目を見開いた。
思わずポッと頬を染める。
「……忘れるわけないでしょ」
と、花澄が上目づかいで環を見ながら言うと。
環は少し笑い、花澄の背を抱き寄せた。
しばらく何かを考えるように花澄の髪を弄んだあと、そっと花澄の頬を撫でる。