恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
料理はフランス料理だが、取り分けることが前提だからだろうか、どれも最初から人数分に分けられ、一口サイズの食べやすいものになっている。
……ここまで気を利かせるとは、さすが高級店だ。
そして料理はどれも最高に美味しい。
こんなに美味しい料理を食べるのは7年ぶりだ。
しかし。
「……」
花澄は海老をフォークで口元に運びながら、ちらりと奥の席の暁生を盗み見た。
……環とよく似た、けれど違う人……。
暁生は知奈ともう一人の女の人と楽しげに談笑している。
どうやら花澄にはあまり興味はないらしい。
それでいいと思う反面、なぜか胸の奥がズキリと痛む。
……環とは別の人なのに……。
目を伏せ、視線を戻した花澄に、本間はにこりと笑って言う。
「なんかさ。花澄ちゃんって清楚な感じがするね。でも芯が強そうと言うか、心が温かそうというか……」
「……え?」
「僕、あまりこういうところで番号を渡すことはないんだけど。でも君とはまた、機会を変えて話したいな。というわけで……」