恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



料理はフランス料理だが、取り分けることが前提だからだろうか、どれも最初から人数分に分けられ、一口サイズの食べやすいものになっている。

……ここまで気を利かせるとは、さすが高級店だ。

そして料理はどれも最高に美味しい。

こんなに美味しい料理を食べるのは7年ぶりだ。

しかし。


「……」


花澄は海老をフォークで口元に運びながら、ちらりと奥の席の暁生を盗み見た。

……環とよく似た、けれど違う人……。

暁生は知奈ともう一人の女の人と楽しげに談笑している。

どうやら花澄にはあまり興味はないらしい。

それでいいと思う反面、なぜか胸の奥がズキリと痛む。

……環とは別の人なのに……。

目を伏せ、視線を戻した花澄に、本間はにこりと笑って言う。


「なんかさ。花澄ちゃんって清楚な感じがするね。でも芯が強そうと言うか、心が温かそうというか……」

「……え?」

「僕、あまりこういうところで番号を渡すことはないんだけど。でも君とはまた、機会を変えて話したいな。というわけで……」


< 35 / 389 >

この作品をシェア

pagetop