恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~

mini story ~ また会う日を楽しみに ~



[mini story ~『また会う日を楽しみに』~]




GWを一週間後に控えた、四月下旬の土曜日。

花澄は鍵の束を片手に北鎌倉の屋敷の前に立っていた。

閉じられた鉄の門扉は7年間の風雨で少し汚れており、その両脇から延びる漆喰の塀もところどころがほつれ、茶色い下地が見えている。

花澄は胸にこみ上げる懐かしさと切なさに、くっと唇を引き結んだ。

高校を卒業するまで環と一緒に住んでいた、懐かしい場所……。

この世に二つとない、環との想い出の詰まった大切な場所……。


「……久しぶりだな……」


花澄は鍵の束の中から門の鍵を出し、鍵穴に差し込み、手早く回した。

カシャンと音を立てて内鍵が外れる。

花澄は鍵の束をジーンズのポケットに戻し、ゆっくりと扉を開けた……。



< 354 / 389 >

この作品をシェア

pagetop