恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
mini story ~ また会う日を楽しみに ~
[mini story ~『また会う日を楽しみに』~]
GWを一週間後に控えた、四月下旬の土曜日。
花澄は鍵の束を片手に北鎌倉の屋敷の前に立っていた。
閉じられた鉄の門扉は7年間の風雨で少し汚れており、その両脇から延びる漆喰の塀もところどころがほつれ、茶色い下地が見えている。
花澄は胸にこみ上げる懐かしさと切なさに、くっと唇を引き結んだ。
高校を卒業するまで環と一緒に住んでいた、懐かしい場所……。
この世に二つとない、環との想い出の詰まった大切な場所……。
「……久しぶりだな……」
花澄は鍵の束の中から門の鍵を出し、鍵穴に差し込み、手早く回した。
カシャンと音を立てて内鍵が外れる。
花澄は鍵の束をジーンズのポケットに戻し、ゆっくりと扉を開けた……。