恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



あの頃の自分を思い出すと、背筋が凍るような気がする。

花澄と再会し、再び絆を結び合わせた今……。

憎しみや怨恨より恐ろしい感情があることに、環は気付いていた。


――――寂しさ。


寂しさは人の理性を打ち砕き、現実逃避へと向かわせる。

どんなに理性的でまっとうな人間でも、この感情に囚われたらなかなか逃げることができない。

さらに『哀しみ』がそこに加わると、その辛さは耐え難いものとなる。

この苦しみを紛らわすためなら、なんでもいいと――――そう、思ってしまう。

酒、女、ギャンブル……

人が何かにのめりこむのは、理由があるのだ。

酒で済んだ自分はまだ良かったのだろう。


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