恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



言いながら本間はスーツの胸ポケットに手を入れた。

そのまま名刺入れを出そうとした、そのとき。


「……さて、ではそろそろ、自己紹介タイムといきましょうか?」


耳に響くハスキーな声に、花澄は息を飲んだ。

見ると、暁生が優雅な笑みを浮かべて皆の顔を見渡している。

その表情に満ちる大人の貫録と────瞳の奥に隠された、刃のような鋭さ。

見た感じは自分とさほど年齢は変わらないように見えるのに、この雰囲気は何だろう。

世の荒波を超えてきた男の自信とでもいうのだろうか、普通の男にはない何かがこの男の奥底には潜んでいる。


やがて自己紹介が始まり、男女ひとりずつ、交互に自己紹介をしていった。

女性のトップバッターは知奈だ。


「西脇知奈です! 広告代理店でライターの仕事をしてます! 彼氏募集中ですが男友達も募集してますので、ぜひ気軽にお声をお掛けくださいっ!」


まるで廃品回収屋のような威勢の良さに、くすくすと笑い声が上がる。

和んだ空気の中、自己紹介は滞りなく進んだ。

男性陣から渡された名刺がテーブルの上に並んでいく。

────そして、最後。


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