恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



──── 一時間後。


「すみません、ちょっと失礼します」


花澄はポーチを片手に立ち上がり、部屋を出た。

御手洗いに行きがてら、化粧直しをするためだ。

花澄は案内係に誘導され化粧室へと向かった。


「……」


化粧室に入った瞬間、思わずはぁと肩を下ろす。

……やはり合コンは、気疲れする。

それに今日のメンツは皆、本物の『金持ち』だ。

『今日はちょっとフンパツしていい店を使おうかな~』という感じではなく、普段からこういう店を使っているとわかる面々だ。

そんな本物の金持ちの前で、こんな格好をしていること自体、恥ずかしい。

知奈は『このチャンスを逃してなるものか!』とばかりに捕食モードになっているようだが、花澄は逆に、少し気分が落ち込むのを感じていた。


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