恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「私は本籍が香港でして。日本語読みをすると『ハヤシアキオ』ですが、香港では『シャオシェン』、もしくは英名の『デリック』で呼ばれております」
「え……ええっ?」
突然のことに、花澄はぽかんと暁生を見た。
……つまり、暁生は日本人ではないらしい。
香港では英国領だった名残で、英語のニックネームをつけ、普段はそれで呼び合うのが普通だというのは聞いたことがあるが……。
となると、先ほどの名刺に書いてあったことは……。
という疑問が顔に出たのか、暁生は悪戯っぽく笑って言った。
「言ったでしょう? あの名刺にはコンビニのレシート程度の価値しかない、と」
「……は、はあ……」
つまり、あの名刺はダミーらしい。
しかし……そうなると、何と呼んでいいか混乱する。
「デ……、デリック、さん?」
「……いいですよ、普通に『暁生』で」
暁生は苦笑しながら言う。