恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
花澄は何の気なしに名刺を裏返した。
名刺の裏には何やら文字が書かれている。
まるで楷書の手本のような綺麗な字だ。
しかし、書いてある内容を理解した瞬間────花澄の顔から、血の気が引いた。
『後で上の部屋に行きましょう』
上の部屋、って……。
さすがにこの意味する内容がわからないほど、花澄は子供ではない。
しかし……。
花澄は突然のことに戸惑いつつも、反射的に首を振った。
一歩後ずさり、暁生を見上げて言う。
「お断りします。その、私は……」
「そういうつもりで来たわけではない、と?」
「そうです。私は、知奈の付き添いで……」
「ええ、わかってますよ。だからこうして、誘っているのです」