恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



どうやら、あのキャバクラの名刺を見られていたらしい。

背を固まらせた花澄に、暁生はすっと腕を伸ばした。

トンと片手を壁につき、至近距離で花澄の顔を覗き込む。

鼻先に香る、甘くスパイシーな香水の香り。

呆然と凝視する花澄に、暁生はうっすらと笑い────囁いた。



「……部屋に来るだけで30万あげましょう。いかがですか?」



その言葉に。

花澄はカッと目を見開いた。

反射的に手を上げようとするが、理性の力で思いとどまり、手を拳に握りしめる。


まさか、こんな……。

こんなことを初対面の人に言われるなんて……。



────こんなにひどい侮辱は、ない。



怒りとともに、鋭い痛みが胸に広がる。

……胸を掻き毟られるかのような、切ない痛み。

こんなに胸が痛むのは、暁生が環に似ているせいなのか、それとも……。


花澄はぎりっと唇を噛みしめ、暁生から顔を背けた。

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