恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「……別に、お金に困ってるわけじゃありませんので。失礼します」
と言い、壁から離れようとした花澄だったが。
その肩を、暁生がそっと押しとどめた。
息を飲む花澄の背を再び壁に押し付け、くすりと笑って背を屈める。
まるで獲物を狙い定めたかのような、鋭い瞳。
花澄は呆然と暁生を見つめた。
暁生の瞳に射抜かれたかのように、身動きが取れない。
全身に漂う大人の男の色気に、激しい瞳に、なす術もなく惹き込まれていく。
────逃げられない。
頭の奥で危険だと声がする。
一刻も早くこの男から逃げないと、全てを食い尽くされてしまう。
暁生は花澄を見据えながら、眼鏡の奥の瞳をゆっくりと細め、口を開いた。