恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



「……そうですか。失礼なことを申しました。今の言葉は忘れてください」

「……っ……」

「しかし、そうですね。……お詫びと言っては何ですが、後で貴女に一杯奢らせてくださいませんか?」

「……え?」

「一杯だけですから。いかがですか?」


暁生はにこりと微笑んで言う。

花澄は目を見開いた。

……一杯、って……。

驚く花澄の手を、暁生がそっと掴んだ。

少しひんやりとした、男らしく節ばった手……。

ドキッとした花澄に、暁生は顔を近づけ、耳元に囁く。


「ここの最上階にバーがあります。なかなかいい酒を揃えているので、楽しんで頂けると思いますよ?」

「……いえ、私は……っ」

「イエスと言ってくださるまで、この手を離しません。……さ、どうしますか?」



< 50 / 389 >

この作品をシェア

pagetop