恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



──── 一時間後。


「……うーん……」


なんだか視界がクラクラする。

花澄は目の前に置かれたワイングラスをじーっと見つめた。

……おかしいな、さっきグラスを空にしたと思ったのに……。

どうしてまた入っているんだろう……。

気のせいだろうか……。

このワインがあんまり美味しいから、飲み終わりたくないと無意識のうちに思っているのだろうか……。


「……さ、どうぞ、花澄さん」

「あの……私、さっき……」


茫洋とした目でグラスを見つめる花澄に、暁生は目を細めて笑う。

その目に一瞬浮かんだ、獲物を捕獲するような鋭い光。

花澄はそれに気付かぬまま、グラスに手を伸ばした。

花澄を見ながら、暁生がくすくすと笑う。


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