恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



──── 一時間後。


「…………」


花澄は朦朧とした意識の中、かくりとカウンターに突っ伏した。

心地よい眠気がふわふわと花澄の全身を包み込む。

……まるで花畑の中にいるような、心地よさ。

夢うつつの中、掠れた声が花澄の耳に忍び込む。



「……相変わらず無防備だな、お前は……」



耳に響くハスキーな声。

……どこかで聞いたことがある、その口調。

必死で思い出そうとしても、酔いと眠気が邪魔し、思い出せない……。

声とともに、花澄の手がそっと掬われる。

日々の家事や工房の仕事で、かさつき、ひび割れた手。

手に触れた温かさに、懐かしさを感じるのはなぜなのだろうか……。


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