恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



部屋の造りからして、ホテルのスイートルームのようだが……。

花澄が今いるのは寝室で、奥にはリビングと書斎のような部屋が見える。

書斎はガラス戸に仕切られ、よくは見えないが……。

どうやら、暁生は書斎で誰かと電話で話しているらしい。

その会話の内容からするに、……暁生には本命の女性がいるようだ。


「……っ……」


花澄はぎりっと唇を噛みしめた。

やはり自分は遊びだったらしい。

最初から分かっていたことだが、なんだか胸に釈然としないものが広がる。

それは彼が、環と似ているせいだろうか……。


────しかし。


一杯だけという約束だったのに、自分がここにいることを考えたら暁生の狙いは明白だ。

暁生の企みに気付かず、一杯ならと承諾してしまった自分がひどく悔しい。

こんなに悔しいのは彼が自分を金で買おうとしたからだろうか、それとも……。

花澄は考えるのを途中でやめ、ふるふると首を振った。


────もう一秒たりとも、こんなところにはいたくない。

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