恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
暁生に気付かれる前にここから出た方がいい。
花澄はふらつく足でベッドから降り、脇のサイドテーブルに置いてあった自分の鞄を奪うように手に取った。
鞄に手を突っ込み、財布を取り出そうとする。
……今日の合コンにしても、さっきのワインにしても、暁生の出費は相当なものだ。
せめて自分が飲んだ分くらいは代金を置いていくのが礼儀というものだろう。
花澄は鞄の中を手で探った。
が、手が震え、なかなか財布を取り出せない。
「……っ……」
花澄は業を煮やし、鞄をエイッとひっくり返した。
どうやら酔いが回っているのでいつもより動作が大胆になっているらしい。
鞄の中から、ハンカチや手帳、財布に混ざり、札束の入った封筒が転がり落ちる。
花澄は財布があったことにほっとし、手に取った。
そのとき。
「……ああ、わかった。ではまた何かあれば、報告を頼む」
暁生の声に、花澄ははっと息を飲んだ。
……どうやら、そろそろ電話が終わるらしい。
花澄はとっさにぶちまけた荷物を鞄の中に突っ込んだ。
そのまま立ち上がり、バッグを片手にベッドの脇に置いてあった靴を履く。
その拍子にバッグから封筒が転がり落ちたが、急いでいた花澄はそれに気付かず、早足で逃げるように部屋を出た……。