恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「……」
昔は藍染めだけではなく、いろいろな草木で染めた商品を、本家が経営している鎌倉駅前の反物店の店先や県内のデパートに置かせてもらっていたのだが……。
本家と断絶してしまった今は、資金難のため人手を減らし、藍染めの売れ筋の商品だけを細々と生産して都内の個人のショップなどに慎ましやかに置かせてもらっている。
花澄は苦い思いで、藍甕に向かう父の後姿をじっと見つめた。
────父を苦境に陥れてしまったのは、自分のせいだ。
7年前、自分がもっと上手く立ち回っていたら、自分たちは本家の怒りを買わずに済んだのかもしれない。
花澄が休みのたびに工房を手伝っているのも、そしてOLで稼いだ金のほとんどを工房の経営に回しているのも、その償いのためだ。
父はそんなことはしなくていい、たまに手伝いに来てくれるだけで十分だと言っているが……。
けれどもう、自分にはこれしかないのだ。