恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
環を裏切り、婚約者であった雪也との縁も切れた今、自分にはもう父しかいない。
父が大事にしているこの工房を、なんとか存続させたい……。
それが今の自分にできる、唯一の償いだ。
自己満足だと、自分でもわかっている。
しかし今の自分には、たとえ自己満足であっても拠所になる何かが必要だ。
『生きがい』と言ってもいいかもしれない。
花澄は携帯に付けた星のチャームをじっと見つめた。
このチャームは7年前、環からクリスマスに貰ったものだ。
もともとペンダントだったのだが、数年前に鎖が切れてしまったため、携帯のストラップにした。
……未練だとわかっていても、どうしても捨てられない。
やはり自分は、あの頃からほとんど変わっていないのかもしれない……。
花澄はため息をつき、作業台へと向かった。