恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
────20:00。
箱根から都内に戻った花澄は、そのまま自分のアパートへと直行した。
待つ人のいない1Kのアパートは年末のせいもあってかどこか寒々しい。
花澄は胸につのる寂しさに、小さなため息をついた。
……昔、まだ鎌倉の屋敷にいた頃。
花澄が帰るとき、屋敷にはいつもどこかに灯りがついていた。
寒い夜でもその灯りを見るとホッと心が和んだ。
そして家に入ると、環が奥から出てきて『お帰りなさいませ、お嬢様』とにこやかな笑顔で迎えてくれた。
もっとも、二人だけの時にはもっとざっくばらんに『遅いぞ、お前』とか言われていたのだが……。
口は悪かったけれど、優しかった環。
環が傍に居てくれたあの頃、自分は幸福だった。
身分の違いはあったけれど、環がいつも傍に居てくれたから、両親が留守がちでも寂しくはなかった。
けれど、今は……。