恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



表には出さなくても、環はいつも花澄のことを考えてくれていた。

そんな環を裏切ってしまった、自分……。

あの時なぜ、一緒に行く覚悟ができなかったのか……。


今思えば、自分ももっと環と話し合えばよかったのかもしれない。

お互いのことをもっと理解できていれば、不安がなくなり、環と一緒に行く覚悟ができたのかもしれない。

今それに気づいたところで、今となってはもうどうしようもないが……。


環に連絡を取ろうにも、環は香港に渡ってから行方知れずだ。

7年前、別離から二週間ほど経った後、花澄は香港大学に環が在籍しているかどうか確認してみた。

しかし返答は『相沢環という名前の学生は在籍しておりません』というもので、それを聞いた瞬間、花澄は目の前が真っ暗になった。

それから何度か大学に電話をかけてみたものの、返答は毎回同じで……。


「……環……」


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