恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



花澄は携帯のチャームを見つめた。

環は今、どこにいるのだろうか……。

彼は強い人間だ。

自殺など考えるはずがないし、あの頭脳であればどこででも生きていけるだろう。

案外、花澄のことなどとっくに忘れて、可愛い女性と結婚し家庭を持っているかもしれない。

今の自分にできるのは彼の幸せを祈ることだけだ。

彼の隣に誰かがいると思うと嫉妬で胸が掻き毟られるが、自分にはそんなことを思う資格すらない。

そう、彼を苦しめたのは、自分なのだ……。


花澄は携帯をテーブルに置き、壁に掛かったカレンダーを見つめた。

明日は月曜だ。

明日、お金を下ろして広瀬に返そう。

正直、今の花澄には100万はかなり痛いが、あれは苦い勉強代だったということで忘れよう。


と思っていた花澄だったが……。



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