恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



そういえば暁生にもらった名刺に、『港南機業』とあった気がする。

花澄の顔が一気に青ざめた。


「……っ!」


まさか……。

花澄は窓口に身を乗り出し、慌てて言った。


「あのっ、このお金をこの振込人の口座に戻すことはできませんかっ!?」

「お客様からこちらの口座への振り込みをご希望ということであれば、それは可能ですが……。少々お待ちください」


女性は再び奥の端末に戻り、何やら操作した。

しかし数分後、難しい顔で花澄の前へと戻ってくる。


「申し訳ございません、お客様。どうやら既に口座は解約されているようです」

「え……ええっ!?」

「振込先が確定できない場合は、振込の処理を行うことはできません。申し訳ありませんが、もう一度お客様の方でお調べいただいてもよろしいですか?」

「……」


────信じられない。

花澄は呆然としたまま、一気に残高が増えた自分の通帳を見つめていた……。


< 71 / 389 >

この作品をシェア

pagetop