恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
例えば、花澄の今の月収は20万程度だが、会社が花澄のために支払っている金を年平均すると、ひと月あたり30万弱になる。
差額は法定福利費だったり厚生年金だったりと、花澄本人に支払われるわけではないが、法律で会社が負担しなければならないと決められているものだ。
人を雇うためには、会社側もかなりの負担を強いられるのだと────そうわかるようになってきたのは、この仕事を始めてからだ。
やがて給湯室から住田が湯飲みを片手に戻ってきた。
「……課長。ちょっとお聞きしたいのですが」
「なんだ?」
「住宅ローン控除なんですけど、これって課税所得金額から控除すればいいですか?」
花澄の質問に、住田はハァと息をついて軽く首を振った。
ずずっとお茶を一口飲み、半目で花澄を見る。
「お前な。まだ休みボケしてるのか? サンタだかカレシだか知らないが、クリスマスはもう終わった。頭から締め出しておけ」
「……す、すみません……」
「住宅ローン控除は所得控除じゃなくって、税額控除だ。つまり算出税額から直接控除される。租税特別措置法に載ってるからよく見てみろ」