恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~




つまらなそうに住田は言い、新聞を再び開いた。

花澄はふむと頷き、手近にあった法税の冊子を手に取った。

住田は口が悪く仕事は怠けがちだが、総務や人事に関する知識は一流だ。

噂ではどこぞの大企業の総務課に勤めていたが、上司との兼ね合いが悪く、ここの社長に誘われて転職したらしい。

加奈子などは隣の物流課の白石課長の方が優しいから、白石課長のもとで働きたいと言っているが、自分に対して優しい人物が自分にとってためになる人物とは限らない。

花澄にとって、住田は付き合いづらい人間ではあるが、総務の知識という一面に限っては尊敬すべき人物である。

花澄は冊子を開き、住田に言われた部分を確認して再びパソコンに向き直った。




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