恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



「ごっ……5兆円!?」


花澄は思わず叫びかけ、慌てて口を塞いだ。

想定していたより遥かに大きい会社だ。

日本でもここまでの会社はそうないだろう。

花澄は続けて暁生の名刺に載っていた『董事』という役職について調べてみた。


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董事 : 取締役

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「……取締役?」


花澄の顔から血の気が引いた。

取締役って……。

花澄は慌てて『港南機業』のホームページを調べてみた。

中国語なのでよくはわからないのだが、組織体制図の中には10人ほどの『董事』がおり、暁生の名前もその中に入っていた。

どうやら暁生が『董事』であるのは本当らしい。


「……」


しかし、であればなぜ、暁生は日本にいるのだろうか。

関連会社一覧を見ると、どうやら港南機業には日本の現地法人もあるらしい。

日本語が堪能なので日本での事業を任されている、ということなのだろうか。


────よくわからない。


花澄は首を捻ったまま、名刺をしまいブラウザを落とした。
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