恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
意趣返し、って……。
花澄は目を見開き、思わず後ずさった。
暁生の黒い瞳が、正面から花澄を見据える。
鋭い怒りを漂わせた、刺すような目……。
女を破滅させる、鋭い瞳……。
息を飲んだ花澄に、暁生はクッと笑って言った。
「まさかあなたがあんな大金を置いていくとは……。私はこれまで、女性に金を渡したことはありますが、女性から施しを受けたことはありません」
「いや、あれは……その……っ」
「しかもそれが、よりにもよって貴女とは。こんなにプライドを傷つけられたのは、生まれて初めてですよ?」
暁生はうっすらと嗤い、言う。
花澄はその笑みに潜む冷たさにゾッとし、背筋を強張らせた。
……つまり、暁生は自分が侮辱されたと思ったらしい。
考えてみれば、暁生がそう思うのも無理はない。
自分のような明らかに貧乏な小娘が、金も地位も持っている暁生に、100万などという金を置いていったのだ。
花澄は暁生の刺すような視線を感じながら、慌てて言った。