恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



「ああ、デートと言っても深夜までは拘束しませんからご安心ください。……もちろん、貴女が望めば話は別ですが」

「……っ」

「というわけで。今度の土曜、12時に新宿駅西口改札で待ち合わせをしましょう。それとも、お住まいの場所まで迎えに行きましょうか?」


暁生の言葉に、花澄は慌てて首を振った。

まさか八王子まで来てもらうわけにはいかない。

しかし、なんという強引さだろう。

既に週末に会う前提で話が進んでいる。


戸惑う花澄に、暁生は眼鏡の奥の瞳を細めてにこりと笑った。

獲物を捕獲するかのような、鋭い光を浮かべたその瞳。

見つめているだけで誘い込まれるような、蠱惑に満ちた美しい瞳……。

その瞳に、甘くスパイシーな香水の香りに、心がついふらりと惹き寄せられる。


「……では、また週末に」


暁生は言い、優雅に踵を返した。

そのまま雑踏の中へと消えていく。

花澄はその場に立ち尽くしたまま、呆然と暁生の後ろ姿を見つめていた。



< 85 / 389 >

この作品をシェア

pagetop