恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「ああ、デートと言っても深夜までは拘束しませんからご安心ください。……もちろん、貴女が望めば話は別ですが」
「……っ」
「というわけで。今度の土曜、12時に新宿駅西口改札で待ち合わせをしましょう。それとも、お住まいの場所まで迎えに行きましょうか?」
暁生の言葉に、花澄は慌てて首を振った。
まさか八王子まで来てもらうわけにはいかない。
しかし、なんという強引さだろう。
既に週末に会う前提で話が進んでいる。
戸惑う花澄に、暁生は眼鏡の奥の瞳を細めてにこりと笑った。
獲物を捕獲するかのような、鋭い光を浮かべたその瞳。
見つめているだけで誘い込まれるような、蠱惑に満ちた美しい瞳……。
その瞳に、甘くスパイシーな香水の香りに、心がついふらりと惹き寄せられる。
「……では、また週末に」
暁生は言い、優雅に踵を返した。
そのまま雑踏の中へと消えていく。
花澄はその場に立ち尽くしたまま、呆然と暁生の後ろ姿を見つめていた。