恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「あのね、知奈。正確に言うと、ワインを飲んだだけであって、そういう関係になったわけじゃ……」
「……ワイン? 暁生さんと?」
「うん。シャトーなんとかって……貴腐ワインとか言ってたけど……」
「……あのさ。それって、『シャトー・ディケム』じゃない?」
知奈の言葉に、花澄はしばし考えた後、頷いた。
確かそんな名前だった気がする。
花澄が頷くと、知奈は花澄の両肩をがしっと掴んだ。
「あんた、シャトー・ディケムを知らないの? ワインの中で唯一『特1級』の称号を持つ、フランスワインの最高級品よ!?」
「……え?」
「どんなに安くても一本20万は下らないうえ、当たり年のビンテージものは余裕で100万以上するのよ!?」
「………………」
花澄は驚きのあまり凍りついた。
あまりよく覚えていないが、あのとき暁生は67年物と言っていた気がする。
67年物といえば、余裕でビンテージの域に入るものだ。
一杯で福沢諭吉が2、3人と思っていたが、実際は10人単位でいたらしい。
真っ青になった花澄に、知奈は呆れたように言う。